のれんをくぐるときの、心の高鳴り

仕事終わりでも、仕事中でも、仕事前でも、夕闇のなかにのれんと赤ちょうちんが浮かび上がっていて、ぷーんと居酒屋ならではの香ばしい匂いがただよってきたら、もう心は一気に持っていかれてしまいます。仕事終わりは心踊らせてのれんをくぐり、仕事中は目をそらし、仕事前には夢中で気持ちを切り替えようと必死になります。たくさんの仲間や連れ合いとのれんをくぐるというのも、あえて書く必要もないほど自明のことではありますが、心は高鳴っています。しかし、私は一人でのれんをくぐることも、何とも言えない喜びを感じるのです。常連になっている店であっても、初めて入る店であっても、です。なぜなら、大抵連れだって出向いたときにはテーブルの席につくことになります。一方、一人はほとんどの場合がカウンターに案内されます。あの、長崎の居酒屋のカウンターから眺める、厨房の様子、食材、煙やにおい、ドリンクの瓶、そして売りであるいかの生け簀すべてそろって、圧倒的に豊かな唯一無二の居酒屋堪能コースです。できることならいまから一杯、のれんをくぐりたいものです。

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